外資系企業の役員給与|損金算入の3要件と外資系特有の実務論点

法人税務

はじめに

外資系企業の日本法人が役員に給与を支払う場合、税務上は源泉徴収法人税の損金算入という2つの観点から検討が必要です。

源泉徴収については、非居住者である外国人役員への支払いに源泉徴収義務が生じるかどうかが論点となります。この点については非居住者への給与・役員報酬の源泉徴収で詳しく解説しています。

本記事では、もう一方の論点である法人税の損金算入要件を取り上げます。「役員に支払った給与がいつ、どのような要件を満たせば損金に算入できるのか」「外資系企業特有の論点(出向役員・親会社負担・株式報酬)ではどのような点に注意すべきか」を実務の観点から解説します。


役員給与の税務上の位置づけ

損金不算入が原則

法人税法上、役員に対する給与は原則として損金に算入されません(法人税法34条1項)。

これは役員が会社の利益処分に関与できる立場にあることから、恣意的な利益操作を防ぐための規定です。従業員への給与が原則として全額損金算入されるのとは、税務上の扱いが大きく異なります。

ただし、一定の要件を満たす給与については例外的に損金算入が認められます。その要件が「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3類型です。

「役員」の範囲

損金算入規制の対象となる「役員」の範囲は、登記上の取締役・監査役にとどまりません。法人税法では以下の者を役員と定義しています(法人税法2条15号)。

  • 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人
  • みなし役員:使用人以外の者で法人の経営に従事しているもの

みなし役員とは、その法人内における地位・職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められる者をいいます。「実質的に経営に従事している」とは、法人の経営上の重要事項の決定に参画していることをいい、単純な事務に従事しているだけではこれに当たりません。

登記上は役員ではない者であっても、その実態に照らして法人税法上の役員とみなされる可能性があります。この判定を誤ると、給与の損金算入が否認される可能性があるため、注意が必要です。

使用人兼務役員

取締役営業部長のように、役員でありながら使用人としての職務も担う者を「使用人兼務役員」といいます。使用人兼務役員については、使用人としての職務に対する給与(使用人分給与)については一般従業員と同様に原則として損金算入されますが、役員としての給与部分は以下の3類型の要件に従います。

ただし、代表取締役・代表執行役・副社長・専務・常務などは使用人兼務役員に該当しません。


損金算入が認められる3類型

定期同額給与

要件の概要

定期同額給与とは、支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとであり、かつ各支給時期における支給額が同額である給与をいいます(法人税法34条1項1号)。毎月同額の月給がその典型例です。

期中改定が認められる3つのケース

原則として、事業年度の途中で役員給与の額を変更した場合、改定後の金額と改定前の金額のうちいずれか高い方と低い方の差額部分が損金不算入となります。ただし、以下の3つの改定事由に該当する場合は例外的に期中改定が認められ、定期同額給与として全額損金算入することができます。

改定事由内容改定時期の制限
定時改定定時株主総会等での役員給与の見直し事業年度開始後3ヶ月以内
業績悪化改定経営悪化・財務困難等やむを得ない事情による減額なし
臨時改定役員の職務内容の重大な変更その他の臨時的事情なし

定期同額給与の判定における外資系実務の留意点

  • 海外親会社の役員給与を参照する場合の例外(基通9―2―12の2):定時改定は原則として事業年度開始後3ヶ月以内に行う必要がありますが、例外もあります。外資系企業において典型的な事例として、日本法人の役員給与が海外親会社の役員給与を参酌して決定される慣行がある場合に、親会社の定時株主総会終了後でなければ日本法人の役員給与改定の決議ができない場合には、期首から3ヶ月後の改定であっても定期同額給与として扱われ損金算入が可能とされています。なお、この特別事情による改定は「継続して毎年所定の時期に改定されるもの」であることが必要であり、単発の改定には適用されません。
  • 外貨建て給与の為替変動:海外親会社から派遣された役員に対して外貨建てで給与を支払う場合、外貨ベースの支給額が毎月同額であれば、為替レートの変動により円換算額が月ごとに異なっても定期同額給与に該当します国税庁質疑応答事例)。円換算後の金額を毎月揃える必要はありません。
  • 経済的利益(フリンジベネフィット)の取り扱い:外資系企業では、役員に対して社宅の提供・子弟の学費負担・ホームリーブ費用・クラブ会費の負担など、金銭以外の経済的利益(フリンジベネフィット)を提供することが一般的です。これらについては、厳密に毎月同額である必要はなく、継続的に供与される経済的利益のうち、その額が毎月おおむね一定であるものであれば定期同額給与として損金算入が認められます。
    実務上の重要なポイントは、定期同額の判定を「法人が費用を支出した時期」ではなく「役員がその利益を享受した時期」で行う点です。例えば、子弟の学費や通勤定期券を法人が一括払いした場合でも、役員が毎月継続的にその恩恵を受けているのであれば、受ける経済的利益は「毎月おおむね一定」と判断されます。
  • グロスアップ計算(手取り契約):役員との間で「手取り額を毎月同額とする」旨の契約(いわゆるグロスアップ契約)を締結している場合、源泉所得税・住民税・社会保険料等の控除後の手取り額が各支給時期において同額であれば、総支給額(グロス額)が月によって異なっていても定期同額給与に該当します(法人税法施行令69条2項)。外国人役員に対して手取り保証型の報酬契約を締結するケースで活用される規定です。

事前確定届出給与

要件の概要

事前確定届出給与とは、所定の時期に確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与をいいます(法人税法34条1項2号)。簡単に言えば、「いつ・いくら支払うか」を事前に決めて届け出た上で、その通りに支払う給与です。役員賞与(ボーナス)をこの類型で損金算入することが典型的な利用場面です。

届出期限

以下のいずれか早い日までに、所轄税務署に届け出る必要があります。

  • 株主総会等の決議により支給額等を定めた日から1ヶ月を経過する日
  • 事業年度開始の日から4ヶ月を経過する日

新設法人については設立後2ヶ月以内など別途規定があります。

実務上の最重要ポイント:支払額・支給日と届出内容の完全一致

事前確定届出給与において最も注意すべき点は、実際の支払額が届出額と1円も違わず一致しなければならないことです。また、原則として支給日も届出書に記載した日付と一致させる必要があります。ただし、届出の支給日に未払い計上を行い、その後実際に支払う場合でも損金算入が認められる余地はあります。

支払額と届出額に差異が生じた場合、その役員に対する事前確定届出給与の全額が損金不算入となります(一部不算入ではありません)。

事前確定届出給与は、事前に税理士に相談して設計した場合であっても、届出書の提出漏れ、支給額のずれ、支給日のずれが実務上生じやすく、相応のリスクを伴います。役員賞与の支給を検討する場合は、事前確定届出給与の活用にこだわらず、翌事業年度の定時改定による定期同額給与の増額で対応するほうが無難なケースも多くあります。


業績連動給与

要件の概要

業績連動給与とは、利益・株価・売上高等の客観的な指標に基づいて算定される給与をいいます(法人税法34条1項3号)。

外資系企業への適用について

業績連動給与の損金算入要件の一つとして、算定方法が有価証券報告書に記載されていることが求められます。これは、日本の金融商品取引法に基づく有価証券報告書であり、日本国内での上場企業等が提出するものです。

したがって、海外親会社が海外証券取引所に上場しており、日本子会社が日本国内で上場していない通常の外資系上場企業の日本子会社のケースでは、この要件を満たすことができず、業績連動給与の適用余地はないと考えられます。平成29年度改正により非同族会社の完全子会社である同族会社も対象に加わりましたが、有価証券報告書の提出要件は変わらず、実務上の影響は限定的です。

外資系日本法人において業績連動型の役員報酬を設計する場合は、業績連動給与の類型ではなく、株式報酬として別途処理する方法が現実的な選択肢となります。


3. 損金不算入となるケース

第2節で述べた定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型のいずれにも該当しない役員給与は、損金に算入されません。典型的な例として、事前に届出を行わずに支給した役員賞与(ボーナス)が挙げられます。外資系企業では届出期限の管理が後手に回りやすく、本来は損金算入できたはずの賞与が不算入となってしまうケースが見受けられます。

また、3類型の要件を満たした場合であっても、支給額が「不相当に高額」な部分については損金に算入されません(法人税法34条2項)。以下では、この過大役員給与について解説します。

過大役員給与

支給額が不相当に高額かどうかは、以下の2つの基準で判定されます。

実質基準:その役員の職務内容、経験年数、当該法人の収益状況、使用人に対する給与の支給状況、同種・同規模の他の法人における役員給与の支給状況等を総合的に勘案して、不相当に高額な部分が損金不算入となります。

形式基準:定款の規定または株主総会の決議で定めた支給限度額を超える部分が損金不算入となります。

外資系企業における実務的リスク

外資系企業では、グローバルの役員報酬水準に合わせて日本法人の役員(特に海外から派遣されたCEOやCFO)に高額な報酬を支払うことがあります。日本法人の規模・業績に対して報酬水準が著しく高い場合、税務調査において過大役員給与として一部損金否認されるリスクがあります。

特に、日本法人の業績が低迷している局面でも高水準の報酬が維持されている場合は否認リスクが高まります。業績に連動した報酬設計、または日本法人の規模に見合った報酬水準への調整が実務的な対応となります。


外資系企業特有の論点

出向役員の給与負担

外資系企業では、海外親会社から役員や社員が出向してくるケースが頻繁にあります。出向者が出向先(日本子会社)において役員に就任する場合、日本子会社が支払う(または負担する)給与には役員給与の損金不算入規定(法人税法34条)が適用されると考えられます。

パターン①:日本子会社が直接支払う場合

日本子会社が役員に給与を直接支払う場合は、損金算入するうえでは、第2節で述べた定期同額給与・事前確定届出給与等の要件を満たす必要があります。日本子会社の取締役に就任している以上、役員給与の損金不算入の規定が適用されます。

パターン②:海外親会社が出向者に給与を支払い、日本子会社が給与負担金を海外親会社に支払う場合(間接支給)

実務上最もよく見られるのがこのパターンです。海外親会社が出向者に給与を支払い続け、日本子会社はその負担分を海外親会社に「給与負担金」として支払う形です。

この場合、給与負担金が役員給与として損金算入されるためには、前提として以下の2つの要件をいずれも満たす必要があります(国税庁タックスアンサーNo.5245、法基通9-2-46)。

  1. 給与負担金の額につき、日本子会社の株主総会等の決議がされていること
  2. 出向契約等において出向期間および給与負担金の額があらかじめ定められていること

これらの要件を満たした上で、毎月定額の給与負担金は定期同額給与として、賞与相当の給与負担金は日本子会社が事前確定届出給与の届出を行うことで、それぞれ損金算入が認められます。

なお、日本子会社が支払う給与負担金が、海外親会社が実際に出向者に支給する給与額を超える場合、その超過部分は給与負担金としての性格を有しないこととなります。合理的な理由がなく適正な金額でない場合には、海外親会社に対する寄附金として取り扱われ、損金不算入とされる可能性があるので注意が必要です。

パターン③:海外親会社が出向者に給与を支払い、日本子会社は負担しない場合

この場合、日本子会社の損金にはなりません。また、合理的な理由がなく日本子会社が費用を負担しない場合、海外親会社から日本子会社へ経済的利益の供与が行われたとして、海外親会社において寄附金課税が行われる可能性があります(海外親会社の所在地国の税制によります)。日本子会社側では、支給すべき給与と受贈益がそれぞれ損金・益金に算入されるため基本的に課税関係は生じないと考えられますが、実態に応じた費用負担の仕組みを整えることが重要です。

実務上の典型的な問題ケース

出向契約の要件を満たしている場合であっても、主として海外親会社の都合による支給額変更が後から生じるケースで問題が起きやすいです。

  • 海外親会社の決算賞与を日本子会社に請求するケース:海外親会社の都合による賞与を事前届出なしに日本子会社が負担した場合、定期同額給与にも事前確定届出給与にも該当せず、日本子会社において損金不算入となります。
  • 3ヶ月経過後のベースアップ:海外親会社のベースアップに伴い日本子会社の給与負担金が増額される場合、定時改定の3ヶ月ルールとの兼ね合いが生じます。ただし、本記事の「定期同額給与」のセクションで述べた通り、海外親会社の給与を参酌して決定する慣行がある場合は特別の事情として3ヶ月経過後の改定も認められます(法基通9-2-12の2)。
  • 給与負担金の支払いサイクルが月次でない場合:海外親会社が出向者に毎月給与を支払っていたとしても、日本子会社が支払う給与負担金が月次ではなく四半期精算など毎月以外のサイクルで支払われている場合、定期同額給与の要件(1ヶ月以下の一定期間ごとの支給)を満たさないこととなります。給与負担金の支払いサイクルは必ず月次で設定することが必要です。

従業員出向との違い

なお、出向者が出向先(日本子会社)で従業員(使用人)となる場合は役員給与規制(法人税法34条)は適用されません。一般的な給与として損金算入されますが、出向者の給与負担に関しては別途実務論点があります。詳細は別記事で解説する予定です。


株式報酬(RSU・ストックオプション等)

外資系企業では、日本法人の役員・従業員に対して海外親会社の株式報酬(RSU・ストックオプション・ファントムストック等)が付与されるケースが多くあります。この論点は損金算入タイミング等の独立したテーマとなるため、別記事で詳述します。


実務チェックリスト

役員報酬改定時の手順

  • 定時株主総会等を事業年度開始後3ヶ月以内に開催し、役員報酬の改定を決議する
  • 議事録に支給額・支給時期を明記する
  • 事前確定届出給与を利用する場合、株主総会決議から1ヶ月以内(または事業年度開始から4ヶ月以内のいずれか早い日まで)に税務署へ届出を行う
  • 毎月の支払額が届出額・議事録記載額と一致していることを確認する

出向役員の給与負担

  • 出向者が日本子会社の役員(または法人税法上のみなし役員)に該当するか確認する
  • 給与負担の方法(直接支払い or 給与負担金)を明確にする
  • 給与負担金を用いる場合、①株主総会決議および②出向契約への事前規定の2要件を満たしているか確認する
  • 給与負担金の支払いが定期同額給与等の要件を満たしているか確認する(賞与は事前確定届出給与の届出が必要)
  • 給与負担金の額が合理的な理由なく海外親会社が実際に支給する給与額を超えていないか確認する

事前確定届出給与の届出期限管理

  • 定時株主総会の開催予定日を踏まえ、届出期限(総会決議から1ヶ月以内)をあらかじめカレンダーに登録する
  • 本社のボーナス支給スケジュールと日本の届出期限の整合性を事前に確認する

まとめ

本記事のポイントを整理します。

役員給与は原則として損金不算入であり、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型に該当する場合にのみ損金算入が認められます。

外資系企業特有の論点としては、以下の2点に特に注意が必要です。

  1. 出向役員の給与負担:誰が支払うかにかかわらず、日本子会社が負担する以上は役員給与規制が適用される
  2. 定期同額給与の改定タイミング:役員給与の改定は原則として事業年度開始後3ヶ月以内に行う必要があるが、海外親会社の給与を参酌して決定する慣行がある場合は、親会社の定時総会終了後の改定でも特別の事情として認められる

役員給与の設計や処理に不安がある場合は、税務顧問への相談をお勧めします。


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