外国子会社合算税制(CFC税制)とは|外国子会社の所得が日本で合算課税される仕組みと判定基準

法人税務

はじめに

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制、CFC税制)は、海外に子会社を持つ日本企業にとって、指摘の多い国際税務の論点です。法人税率の低い国・地域に子会社を設立している場合、その子会社の所得が日本の親会社の所得に合算され、日本で課税されることがあります。

ただし、注意が必要なのは、「タックスヘイブン」という名称から受ける印象とは異なり、いわゆるタックスヘイブンと呼ばれる特定の国・地域でなくとも本制度の対象になりうる点です。たとえば、香港やシンガポールのような一般的なビジネス拠点として認知されている国・地域に設立した子会社であっても、事業実態や所得の性質によっては合算課税が生じます。「タックスヘイブン」という言葉にとらわれず、海外子会社を持つ企業は制度の適用要件を正確に把握しておく必要があります。また昨今の国際的な法人税率の引き下げに伴い、対象となりうる国が広がっている点にも注意が必要です。

この制度のわかりにくさは、「低税率国に子会社があれば必ず課税される」わけでも、「現地で事業を行っていれば対象外になる」わけでもない点にあります。実際には、子会社の事業実態と租税負担割合という2つの軸の組み合わせによって、合算課税の有無と範囲が決まります。

この記事では、外国子会社合算税制(CFC税制)の全体像を判定の早見表で示したうえで、どのような外国子会社が合算課税の対象になるのか、その判定基準と合算額の計算の流れを解説します。

外国子会社合算税制(CFC税制)とは

外国子会社合算税制(CFC税制)とは、税負担の著しく低い国・地域に実体の乏しい子会社を置き、そこに所得を留保することで日本の課税を回避する行為に対応するための制度です(租税特別措置法第66条の6)。一定の要件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社(内国法人)の所得とみなして合算し、日本で課税します。なお、合算課税により生じる二重課税は、外国子会社が現地で納付した外国法人税を一定の範囲で控除することにより調整される仕組みになっています。

事業実態と租税負担割合の2軸で判定する

この制度は、突き詰めれば外国子会社の「事業実態」と「租税負担割合」の2軸で結論が変わる制度です。事業実態の側からは外国子会社が3つの類型のいずれに当たるかを判定し、租税負担割合の側からは適用免除の基準(外国子会社の税負担が一定以上であれば合算しない基準)に達しているかを判定します。両者を組み合わせると、合算課税の有無と範囲は次の早見表のとおり整理できます。

租税負担割合 \ 事業実態ペーパーカンパニー等
(特定外国関係会社)
経済活動基準を非充足
(対象外国関係会社)
経済活動基準を充足
(部分対象外国関係会社)
27%以上
20%以上27%未満全部合算
20%未満全部合算全部合算受動的所得のみ部分合算

表の「—」は合算課税の適用が免除されることを、「全部合算」は外国子会社の所得全体が日本の親会社に合算されること(会社単位の合算課税)を表します。読み方のポイントは次の3点です。

第一に、ペーパーカンパニー等(特定外国関係会社)だけは免除の基準が租税負担割合27%以上と高く設定されています。この27%という基準は令和5年度改正により従来の30%から引き下げられたもので、令和6年4月1日以後に開始する日本の親会社の事業年度から適用されます。

第二に、対象外国関係会社と部分対象外国関係会社については、免除の基準は租税負担割合20%以上です。

第三に、租税負担割合が20%未満であっても、経済活動基準をすべて満たす部分対象外国関係会社であれば、合算されるのは配当・利子・使用料といった受動的所得に限られ、事業から得た能動的所得は合算対象外となります。

3つの類型はどのような会社か

早見表の横軸に並ぶ3つの類型は、それぞれ次のような外国子会社を指します。

特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)は、租税回避リスクが特に高いと考えられる外国子会社です。その代表がペーパーカンパニーで、事業に必要な事務所等の固定施設を有していない、かつ現地で事業の管理・支配・運営を自ら行っていない外国子会社がこれに当たります。事業実態が乏しいことから、租税負担割合27%以上でない限り、所得全体が会社単位で合算されます。なお、特定外国関係会社にはペーパーカンパニーのほかにも該当する類型がありますが、詳細は後のセクションで扱います。

対象外国関係会社は、特定外国関係会社に当たらないものの、能動的所得を得るために必要な経済活動の実体を備えているかを判定する「経済活動基準」(事業基準・実体基準・管理支配基準・非関連者基準または所在地国基準の4要件)のいずれかを満たさない外国子会社です。租税負担割合が20%未満であれば、所得全体が会社単位で合算されます。

部分対象外国関係会社は、経済活動基準をすべて満たす外国子会社です。配当・利子・使用料などの受動的所得についてのみ、租税負担割合が20%未満の場合に部分的に合算されます。

それぞれの類型の判定基準と合算の範囲は、以降のセクションで順に確認していきます。

租税負担割合とは

租税負担割合とは、外国子会社の所得に対して、その所在地国等で課される外国法人税が占める割合をいい、おおむね外国法人税の額をその所得の金額で割って求めます。適用免除の基準となる27%・20%は、いずれもこの租税負担割合と比較して判定します。

ここで注意が必要なのは、分母となる所得の金額です。現地の法令で非課税とされている所得も分母に加算したうえで計算するため、租税負担割合は必ずしもその国の法定税率と一致しません。とりわけ、外国子会社が非課税所得や税額控除といった優遇措置の適用を受けている場合には、租税負担割合がその国の法定税率を下回って算定されることがあります。

このため、法定税率が20%以上の国に所在し、事業の実体を備えた子会社であっても、優遇措置の適用により租税負担割合が20%を下回り、合算課税の対象となるケースがある点に注意が必要です。

対象となる外国関係会社と納税義務者

合算課税の対象となる外国法人を「外国関係会社」といいます。居住者・内国法人等が合計で発行済株式等の50%超を直接または間接に保有している外国法人がこれに該当します。

そのうえで、実際に合算課税を受けるのは、その外国関係会社を直接および間接に10%以上保有する内国法人などに限られます。持株割合の小さい少数株主にすぎない場合には、外国関係会社に該当する子会社であっても合算課税の対象外となります。

特定外国関係会社|ペーパーカンパニー等

特定外国関係会社は、租税回避リスクが特に高いと考えられる外国子会社で、ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在の会社の3つの類型があります。いずれかに該当すると、租税負担割合が27%以上でない限り、所得全体が日本の親会社に合算されます(会社単位の合算課税)。

ペーパーカンパニー

ペーパーカンパニーとは、次の実体基準と管理支配基準のいずれも満たさない外国関係会社をいいます。

実体基準は、主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設(所有だけでなく賃貸も含む)を有しているかどうかで判定します。ここでいう固定施設は、単なる物的設備ではなく、主たる事業に係る活動を行っている実態がある固定施設です。

管理支配基準は、本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っているかどうかで判定します。具体的には、事業方針や業績目標を定め、事業計画を策定するなど事業の運営方針を自ら決定し、それに基づいて裁量をもって事業を執行していることが求められます。この判定は株主総会及び取締役会等の開催状況、事業計画の策定や役員等の職務執行状況、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所その他の状況を総合的に勘案することとされています。

事実上のキャッシュボックス

事実上のキャッシュボックスとは、能動的な事業活動をほとんど行わずに受動的所得を生み出している外国関係会社をいいます。総資産の額に対する一定の受動的所得の割合が30%を超え、かつ、総資産の額に対する有価証券・貸付金・無形資産等の割合が50%を超える場合に該当します。豊富な資産を保有しながら事業の実体に乏しいことから、租税回避リスクが高いと位置づけられています。

ブラックリスト国所在の会社

租税に関する情報交換への協力が著しく不十分な国・地域として財務大臣が告示で指定した国・地域に本店等を有する外国関係会社も、特定外国関係会社に該当します。

対象外国関係会社と経済活動基準

特定外国関係会社に該当しない外国関係会社であっても、能動的所得を得るために必要な経済活動の実体を備えていなければ、対象外国関係会社として会社単位の合算課税を受けます。この実体の有無を判定する基準が経済活動基準で、次の4要件で構成されます。4つのうち1つでも満たさない場合は対象外国関係会社に当たり、租税負担割合が20%未満であれば所得全体が合算されます。

事業基準は、主たる事業が株式等の保有、工業所有権・著作権等の提供、または船舶・航空機の貸付けでないことを求めるものです。これらは現地に本店を置いて行う積極的な経済合理性を見出しにくい事業とされています。ただし、一定の要件を満たす統括会社や航空機リース会社は、この基準の対象から除外されます。

実体基準は、本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等の固定施設を有していることを求めます。管理支配基準は、本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っていることを求めます。これらの内容は、ペーパーカンパニーの判定で用いる実体基準・管理支配基準と基本的に同じ考え方によります。

最後に、4つ目の要件は事業の種類によって2つに分かれます。卸売業など8業種については、主として関連者以外の者と取引を行っていることを求める非関連者基準が適用されます。それ以外の業種については、主として本店所在地国で事業を行っていることを求める所在地国基準が適用されます。

部分対象外国関係会社と部分合算課税

経済活動基準をすべて満たす外国関係会社は部分対象外国関係会社となり、事業から得た能動的所得は合算の対象外となります。ただし、経済活動基準を満たしていても、事業の実体を伴わずに得られる受動的所得については、租税回避リスクが残ると考えられるため、租税負担割合が20%未満の場合に部分的に合算されます。これを部分合算課税といいます。

合算の対象となる受動的所得には、配当、利子、有価証券の貸付けや譲渡による損益、デリバティブ取引に係る損益、外国為替差損益、有形固定資産の貸付対価、無形資産の使用料や譲渡損益などが含まれます。これらは資産を保有することによって受動的に生じる所得という性質を持ちます。

なお、事務負担に配慮する観点から、部分合算課税には少額免除が設けられています。部分合算の対象となる金額(部分適用対象金額)が2,000万円以下である場合、または当該外国関係会社の税引前利益に占める割合が5%以下である場合には、部分合算課税は適用されません。

合算額の計算

合算される金額の算定方法は、子会社の所得全体を合算する「全部合算(会社単位の合算課税)」と、受動的所得のみを合算する「部分合算」とで異なります。

全部合算の場合

特定外国関係会社、または経済活動基準を満たさない対象外国関係会社に当たる場合は、子会社の所得全体が合算の対象となります。出発点となるのは外国子会社の所得の金額で、過年度の繰越欠損金や現地で納付する外国法人税の額を差し引きます。最後に、この金額に日本の親会社の持分割合を乗じた金額が、親会社の所得に合算されます。たとえば親会社が外国子会社を100%保有していれば、調整後の所得の全額が合算されることになります。

部分合算の場合

経済活動基準をすべて満たす部分対象外国関係会社に当たる場合は、子会社の所得全体ではなく、配当・利子・使用料などの受動的所得のみが合算の対象となります。これらの受動的所得を集計し、一定の損益通算や過年度の損失の繰越控除を行ったうえで、日本の親会社の持分割合を乗じた金額が合算されます。事業から得た能動的所得は合算されません。

合算の時期と二重課税の調整

いずれの場合も、合算された金額は、外国子会社の事業年度終了の日の翌日から2か月を経過する日を含む親会社の事業年度の益金に算入されます。また、外国子会社が現地で納付した外国法人税のうち合算所得に対応する部分は、日本の親会社の外国税額控除の対象とすることで、二重課税が調整されます。外国税額控除の仕組みは外国税額控除とは|外資系企業が直面する二重課税の解消と計算・申告の実務で解説しています。

まとめ

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制、CFC税制)は、外国子会社の「事業実態」と「租税負担割合」の2軸で結論が変わる制度です。事業実態の側では特定外国関係会社・対象外国関係会社・部分対象外国関係会社のいずれに当たるかを判定し、租税負担割合の側では適用免除の基準(特定外国関係会社は27%、対象・部分対象外国関係会社は20%)に達しているかを判定します。

いわゆるタックスヘイブンと呼ばれない国・地域の子会社であっても、事業実態や所得の性質によっては合算課税が生じます。海外子会社を保有している場合や、グループ内の資本構成の変更を検討している場合には、それぞれの子会社がどの類型に当たるかを早い段階で確認しておくことが重要です。

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