外国法人・非居住者への源泉徴収免除証明書とは|取得手続きと支払者側の対応実務

外国人・個人課税

外国法人や非居住者(外国人個人)に対して、ロイヤリティ・役務提供料・利子などを支払う場合、原則として支払者側に源泉徴収義務が生じます。

ただし、支払いを受ける外国法人・非居住者が日本国内に恒久的施設(PE)や営業所を有し、申告納税を行っている場合には、「源泉徴収免除証明書」を取得・提示することで、支払者側の源泉徴収義務が免除されます。これにより、受取時点での源泉税による資金拘束がなくなり、受取者側の資金効率を高めることができます。

本記事では、この源泉徴収免除証明書の制度概要・取得手続き・支払者側の実務対応を解説します。なお、本記事は「外国法人のPE課税」シリーズ(記事15記事16記事17)と合わせて読むとより理解が深まります。

源泉徴収免除証明書とは

制度の趣旨

日本において申告納税を行っている外国法人・非居住者がいる場合、その者への支払いについて源泉徴収を行うと、申告課税と源泉徴収の二重負担が生じます。

例えば、日本に支店(PE)を持つ外国法人がそのPEに帰属するロイヤリティを受け取る場合、そのロイヤリティはPE帰属所得として申告対象となります。にもかかわらず支払者が源泉徴収を行えば、同じ所得に対して源泉税と法人税・所得税の両方が課される形になります(なお、法人税・所得税の確定申告の際に精算されるため最終的に二重課税とはなりません)。

この問題を解消するのが源泉徴収免除証明書の制度です。免除証明書を税務署から交付してもらい、支払者に提示することで、支払者側の源泉徴収義務が免除されます。本制度は、日本国内にPEを持ち申告納税を行う外国法人・非居住者に対して、居住者・内国法人と同等の待遇(内国民待遇)を与えることを趣旨としています。根拠法令は外国法人については所得税法第180条第1項、非居住者については所得税法第214条第1項です。

免除証明書を取得するメリット

免除証明書を取得することには、主に以下の4つのメリットがあります。

① キャッシュフローの改善

最大のメリットは、利子・ロイヤリティ・役務提供の対価などの国内源泉所得について、支払時点での源泉徴収が免除される点です。源泉徴収による資金拘束がないため、手元の資金効率を高めることができます。

② 取引のスムーズ化

支払者側が源泉徴収手続きを行う必要がなくなるため、支払いにかかる事務処理が簡素化され、取引をスムーズに進めることができます。源泉徴収の要否をめぐるやりとりや、控除額の計算・納付手続きが不要になる点は、双方にとって実務上のメリットとなります。

③ 提示方式による事務負担の軽減

1枚の証明書を複数の支払者に提示するだけで免除が受けられます。かつての「提出方式」では支払者の数だけ証明書を申請・交付してもらう必要がありましたが、平成16年度(2004年度)の税制改正以降は「提示方式」に変更され、事務負担が大幅に軽減されました。

④ 継続的な免除の適用

一度証明書の交付を受ければ、税務署長が定めた有効期限内に行われる支払いについては、継続的に源泉徴収なしで受領することができます。更新手続きさえ行えば、継続的な適用が可能です。

免除の対象となるケース・対象外のケース

対象となるケース

免除証明書の交付を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

要件外国法人非居住者(個人)
PE・営業所日本国内にPEまたは営業所を有していること
対象所得当該所得がPE帰属所得として申告課税の対象であること
届出「外国普通法人となった旨の届出書」(法人税法第149条)を提出済み開業届出(所得税法第229条)を提出済み
申告前年分の所得税確定申告書を提出済み
不正行為偽りその他不正の行為により所得税または法人税を免れたことがないこと
帳簿記録証明書を提示する場合に、支払者の名称・事務所等の所在地を帳簿に記録することが確実と見込まれること
その他会社法・民法による国内登記納税地に現住しない場合は納税管理人の届出

免除の対象となる所得の範囲は、外国法人か非居住者かによって所得税法上異なります。いずれの場合も「日本国内のPEに帰属する所得」であることが大前提です。

外国法人が源泉徴収免除を受けられる所得(所得税法第180条第1項)

所得の種類備考
組合契約等に基づく事業利益の配分組合事業に係るPE以外のPEに帰せられるものに限る
国内にある土地等の譲渡対価国内にある営業所に信託された信託財産に帰せられるものに限る
人的役務提供事業の対価
不動産等の貸付けによる対価
貸付金の利子
ロイヤリティ(使用料等)工業所有権・著作権などの使用料を含む
広告宣伝のための賞金
生命保険契約等に基づく年金

非居住者が源泉徴収免除を受けられる所得(所得税法第214条第1項)

所得の種類備考
組合契約等に基づく事業利益の配分組合事業に係るPE以外のPEに帰せられるものに限る
人的役務提供事業の対価
不動産等の貸付けによる対価
貸付金の利子
ロイヤリティ(使用料等)一定の工業所有権・著作権等の使用料は免除対象外
報酬等一定のものに限る
生命保険契約等に基づく年金1回の支払額が25万円以上のものは免除対象外

対象外のケース

以下に該当する場合は免除証明書を利用できず、原則どおり源泉徴収が必要です。

  • 日本国内にPEや営業所を持たない外国法人・非居住者への支払い(→租税条約届出書の活用を検討)
  • PEは有するが、当該支払いがPEに帰属しない所得である場合
  • 配当、貯金・公社債等の利子、匿名組合の分配金など、制度上対象外とされている所得

実務上問題になりやすいケース

ロイヤリティ・役務提供料・利子等について、「その所得がPEに帰属するか否か」が明確でないケースがあります。帰属関係が曖昧な場合は、免除証明書の取得可否も含めて事前に整理しておくことが重要です(PE帰属の判定については記事16参照)。

また、PEを有していない可能性がある外国法人が免除証明書を取得することは、PE存在の事実上の認容につながりかねないため、PE該当性の整理を先行させたうえで慎重に判断することが重要です(記事15参照)。

取得手続き(外国法人・非居住者側)

申請・提出方法

申請書の正式名称は「外国法人または非居住者に対する源泉徴収の免除証明書の交付(追加)申請書」(国税庁 手続きコード:A2-22)です。e-Taxソフトによる電子申請のほか、書面での提出(持参または郵送)も可能です。提出先は法人税または所得税の納税地の所轄税務署長となります。手続きの詳細・様式は国税庁のページ(A2-22)からご確認ください。

提出期限と有効期間の更新

提出期限は特に定められていませんが、支払いが発生する前に余裕を持って申請することが実務上の基本です。

有効期間は所轄税務署長が定めるものであり、法律上一律に定まっているわけではありません。すでに証明書の交付を受けている場合、有効期間満了後に新たな証明書の交付を受けるには、有効期間終了のおおむね1ヶ月前までに更新申請を行う必要があります。有効期間の空白が生じないよう、期限管理を徹底することが重要です。

免除要件に該当しなくなった場合の手続き

証明書の交付を受けた後に日本国内のPEを閉鎖するなど、免除要件に該当しなくなった場合には、遅滞なく納税地の所轄税務署長に届け出るとともに、証明書の提示先である支払者にもその旨を通知する義務があります。この届出・通知を怠った場合には、所得税法第242条の罰則規定の対象となる可能性があります。事業撤退や組織再編等の際には、証明書の取り扱いについても忘れずに確認してください。

支払者側(日本法人等)の実務対応

証明書を受領した場合

相手方から免除証明書の提示を受けた場合は、以下を確認のうえ対応します。

  • 有効期間:当該支払いが有効期間内に行われるか
  • 対象所得の範囲:支払内容が源泉免除の対象となる所得であるか
  • 提示者の同一性:証明書に記載された法人・個人が支払先と一致するか

確認後、源泉徴収なしで支払いを行います。また、証明書を提示した者の名称および有効期限を帳簿に記載する義務があります。証明書そのものは受取者が保持するものですが、法令上の義務ではないものの、実務上は証明書のコピーを保管しておくことが一般的です。税務調査時のエビデンスとして有用です。

なお、証明書は有効期限の経過以外にも、要件非該当となった旨が官報で公示された場合にも効力を失います。多額の支払いを行う際などには、有効期限だけでなくこうした失効事由にも注意が必要です。

証明書がない場合

外国法人・非居住者から証明書の提示がない場合は、通常どおり源泉徴収を行います。証明書の取得は受取者側の責任であり、支払者が代わりに取得することはできません。

「証明書があるはずだ」という口頭の説明だけで源泉徴収を省略することは認められません。

有効期間切れに気づかず源泉徴収しなかった場合

証明書の有効期間が切れているにもかかわらず源泉徴収を行わなかった場合、支払者側に源泉徴収漏れが生じます。この場合、不納付加算税・延滞税の対象になりえます。更新状況の管理は支払者・受取者の双方で確認する体制を整備しておくことを推奨します。

よくある疑問・実務上の注意点

Q. PE認定リスクを懸念しているが、証明書を取得すべきか?

免除証明書の交付を受けるためには、外国法人の場合「外国普通法人となった旨の届出書」、非居住者の場合「開業届出書」の提出が前提となります。これらはいずれも日本国内で事業を行う(=PEを有する)ことを前提とした手続きです。証明書の申請は実質的にPEの存在を認容する行為となるため、PE認定リスクを抱える段階では、PE該当性の整理を先行させることが重要です(記事15参照)。

Q. 租税条約届出書と免除証明書、どちらを使うべきか?

両者は目的・根拠・適用場面が異なる別個の手続きです。使い分けの出発点はPEの有無です。

租税条約届出書源泉徴収免除証明書
根拠租税条約および租税条約実施特例法所得税法第180条・第214条
目的条約による税率軽減・ゼロ税率の適用申告課税への移行に伴う源泉免除
申請先支払者経由で所轄税務署受取者(外国法人等)が直接税務署へ
適用場面主として外国法人・非居住者のPE帰属所得以外の所得主としてPEを持つ外国法人・非居住者のPE帰属所得

本制度は、PEを有し申告納税を行う者に「内国民待遇」を与えることで源泉徴収を免除するものです。一方、主としてPEを持たない者が条約による減免を受ける場合は租税条約届出書が対応します。租税条約届出書の詳細は記事10をご参照ください。

まとめ

源泉徴収免除証明書は、日本国内にPE・営業所を持ち申告課税される外国法人・非居住者への支払いについて、源泉徴収と申告課税の二重負担を解消する制度です。

項目内容
根拠法令所得税法第180条(外国法人)・第214条(非居住者)
取得者外国法人または非居住者(受取者側)
申請方法e-Tax または書面(A2-22)
提出先法人税・所得税の納税地の所轄税務署
有効期間税務署長が定める(更新は期間終了のおおむね1ヶ月前)
支払者の義務証明書がない場合は通常どおり源泉徴収・帳簿への名称・有効期限の記載

実務上は証明書の有効期間管理と、租税条約届出書との使い分けが特に重要なポイントです。

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