外国税額控除とは|外資系企業が直面する二重課税の解消と計算・申告の実務

法人税務

はじめに:外資系企業と二重課税

外資系の日本法人(内国法人)が海外の関連会社等から所得を受け取る場合、その所得は外国でも課税され、日本でも課税される「二重課税」が生じることがあります。

典型的な場面は次のとおりです。

  • 海外親会社・関連会社への融資に対する受取利子(例:日本法人が余剰資金を中国親会社に貸し付け、利子を受け取る場合)
  • 海外からのロイヤリティ受取(例:日本法人が知的財産を保有し、海外関連会社に使用許諾する場合)
  • 海外子会社からの配当受取
  • 海外拠点(PE)からの事業所得

これらの所得は、源泉地国(外国)で源泉税等が課される一方、受取人である日本法人の課税所得にも算入されるため、日本でも法人税が課されます。

この二重課税を解消・緩和する手段として、次の2つがあります。

手段概要
租税条約による税率軽減源泉地国での課税を条約税率まで引き下げる(源泉税の話)
外国税額控除外国で納めた税額を日本の法人税から直接控除する(今回のテーマ)

なお、外国子会社からの配当については「外国子会社配当益金不算入制度」が適用されることが多く、外国税額控除との関係は後述します。

損金算入方式 vs 外国税額控除方式

外国で課された税額の取り扱いには、2つの方式があります。

  • 損金算入方式:外国で納めた税額を損金に算入し、日本の課税所得を圧縮する
  • 外国税額控除方式:外国で納めた税額を日本の法人税額から直接控除する(法人税法69条)

どちらを選ぶかは事業年度ごとに法人が任意選択します。

計算例で比較する

以下の前提で2つの方式を比較します。

項目金額
国内所得1,000万円
国外所得(中国親会社からの受取利子)100万円
全世界所得合計1,100万円
中国の源泉税(日中租税条約・利子条約税率10%)10万円
日本の法人税率(簡便計算)30%

参考)日中租税条約の利子源泉税率
利子の条約税率は10%です(詳細は外資系企業の利子源泉税参照)。

① 損金算入方式

計算過程金額
課税所得(外国税10万円を損金算入)1,090万円
日本の法人税額(1,090 × 30%)327万円
合計税負担(327 + 10)337万円

② 外国税額控除方式

計算過程金額
課税所得(外国税は損金算入しない)1,100万円
法人税額(控除前)(1,100 × 30%)330万円
控除限度額(330 × 100 ÷ 1,100)30万円
外国税額控除(min(10, 30))10万円
法人税額(控除後)(330 − 10)320万円
合計税負担(外国税10 + 日本税320)330万円

外国税額控除方式の方が7万円有利

なぜ外国税額控除の方が有利か?

損金算入は「外国税額の分だけ課税所得を減らす」ため、日本法人税が軽減される金額は10万円 × 30% = 3万円にとどまります。

一方、外国税額控除は「外国で納めた税額を日本の税額から差し引く」ため、10万円まるごと日本税が軽減されます。

一般に、課税所得が黒字であれば外国税額控除方式の方が有利となる場合が多いです。

ただし、赤字かつ今後3年以内に黒字回復の見込みがない場合は逆になります。赤字の場合、日本の法人税額がゼロとなり控除限度も0となるため税額控除ができません。控除限度超過額として繰越すことはできますが、繰越期間は3年間に限られるため、その間に黒字化できなければ結局使い切れません。

それだけでなく、外国税額控除では外国税額が損金に算入されないため、その分だけ欠損金が少なくなります。欠損金は10年間の繰越控除が可能であるため、将来の節税価値という観点では損金算入方式の方が有利となる場合が多いです。

整理:赤字かつ3年以内に黒字回復の見込みがない場合

  • 外国税額控除:控除できない・繰越しても使い切れない・欠損金も減る → 不利
  • 損金算入:欠損金が増え、10年間の繰越控除として将来の節税原資になる → 有利

外国税額控除の計算構造

対象となる「外国法人税」とは

外国税額控除の対象となるのは、外国の法令により課される法人税に相当する税です(法人税法69条1項)。

  • 対象となる税:所得・収益・利益に対して課される外国の税(法人税・所得税・源泉税等)
  • 対象外となる税:罰則的な税、間接税(消費税相当)、特定の付加税等

また、租税条約で外国の源泉税率が引き下げられている場合、条約適用後の税額のみが外国税額控除の対象となります。例えば租税条約により利子の源泉税率が10%となる一方で20%の源泉税が課されてしまっている場合、控除対象は10%に基づく税額であり、限度税率超過部分は外国税額控除の対象外となります。

控除限度額の算式

外国税額控除は、日本の法人税額全体を外国に移転させることはできないという考え方から、控除できる上限(控除限度額)が設けられています。

控除限度額 = 法人税額(控除前)× 調整国外所得金額 ÷ 全世界所得金額

実務上は「調整国外所得金額」の計算(一定の調整項目あり)が必要ですが、本設例では基本的な構造の理解を目的として、簡略化した計算式で説明します。

上記の計算例に当てはめると:
330万円 × 100万円 ÷ 1,100万円 = 30万円

外国税額(10万円)が控除限度額(30万円)を下回っているため、全額控除できます。

超過額・余裕額の繰越制度

状況取り扱い
外国税額 < 控除限度額外国税額の全額を控除できる。差額(控除余裕額)は3年間繰越可能
外国税額 > 控除限度額控除限度額までしか控除できない。超過額(控除限度超過額)は3年間繰越控除可能

繰越期間中に控除余裕額・超過額が生じた場合には、過去の超過分を活用できます。

注意:損金算入方式を選択した年度の繰越
当該事業年度について損金算入方式を選択した場合、それ以前に生じていた控除余裕額・控除限度超過額はないものとして取り扱われます。翌事業年度以降に外国税額控除方式に戻したとしても、繰越残高はゼロとなります。過去の繰越残高がある場合は、方式の切り替えに特に注意が必要です。

外国税額の認識時期(納付確定基準)

外国税額控除は、外国法人税が「納付することが確定した日」の属する事業年度に適用します(法人税法69条1項)。

外国税の種類認識時期
源泉徴収による税(利子・配当・ロイヤリティ等)源泉徴収された日(支払日)
確定申告による税(現地法人税・所得税)申告書を提出した日
更正・決定による税更正・決定のあった日

実務上の問題点

源泉税については支払日に認識されるため、日本法人が所得を受け取るタイミングと概ね一致し、事業年度のずれが生じることは多くないと考えられます。

一方、海外にPEを有する場合には認識時期のずれが問題になりやすいです。法人税は日本を含め一般的に翌事業年度に申告納付を行うため、所得の計上年度と外国法人税の認識年度が1事業年度ずれることになり、控除できる事業年度の管理に注意が必要です。

国外所得金額の計算

控除限度額の計算式に用いる「国外所得金額」は、受け取った国外所得の総額そのものではなく、一定の調整を加えた「調整国外所得金額」を使用します。

控除限度額 = 法人税額 × 調整国外所得金額 ÷ 全世界所得金額

基本的な計算構造は、国外所得部分を切り出してP&Lを作成し、国外所得部分に係る法人税上の税務調整を加味して国外所得金額を算出する、というイメージです。その際に、国内外に共通して発生する費用(共通経費)や借入金の利子(共通利子)を国外所得部分に配賦することで、国外所得金額が確定します。なお、外国で課税されない国外所得(非課税国外所得)は調整国外所得金額から除外されます。

この調整により、実際の控除限度額は国外所得の単純な按分よりも小さくなることが多く、外国税額控除の実効性に大きく影響します。

計算例(本記事の説例の場合)

本記事の説例(中国親会社への余剰資金の貸付・受取利子100万円)を例に取ると、国外所得金額の計算は概ね以下のようになります。

項目金額
収入金額(受取利子)100万円
直接対応する原価・販管費なし
共通経費の配賦額△X万円(売上・資産等の基準で按分)
共通利子なし(余剰資金の貸付であり借入金なし)
調整国外所得金額(100 − X)万円

余剰資金の運用に係る利子収入は、直接対応する原価や販管費が発生しないため、主な控除項目は共通経費の配賦額となります。共通経費の規模によっては、調整国外所得金額が収入金額(100万円)から相当程度圧縮される場合があります。

共通経費の配賦

国内・国外双方の所得に共通して対応する費用(共通経費)は、一定の配賦基準(売上・資産・人件費等)により国内分・国外分に按分し、国外に配賦された額を国外所得から控除します。

対象となる典型的な共通経費の例:

  • 本社管理費・間接部門の人件費
  • 研究開発費
  • システム費・IT関連費用

これらの費用が大きい企業では、調整後の国外所得金額が大幅に圧縮され、控除限度額が想定より低くなることがあります。

共通利子の配賦

国内・国外双方の所得に共通して対応する借入金の支払利子のうち、国外所得に対応する部分(共通利子)も、国外所得金額から控除する必要があります。

国外所得金額の上限

調整国外所得金額には全世界所得金額の90%という上限が設けられています。国外所得の割合が極めて高い企業であっても、この上限により控除限度額が制限されます。

外国子会社配当との関係

配当益金不算入制度との整理

日本法人が外国子会社(持株割合25%以上・保有期間6ヶ月以上が原則)から受け取る配当は、配当額の95%が益金不算入となります(法人税法23条の2)。また益金不算入となる代わりに、配当に係る外国源泉税は損金不算入となります(法人税法39条の2)。この規定の適用を受ける配当に係る源泉税については、外国税額控除の対象となりません。整理すると以下の通りとなります。

ケース外国税の処理
外国子会社配当(持株25%以上)配当の95%益金不算入 → 対応する外国源泉税は損金不算入・外国税額控除も不可
外国子会社配当(持株25%未満)益金不算入不適用 → 外国税額控除の対象となる
利子・ロイヤリティ等益金に全額算入 → 外国税額控除の対象となる

タックス・スペアリング・クレジット(みなし外税)

概要

タックス・スペアリング・クレジット(Tax Sparing Credit)とは、外国が政策的に税を免除・軽減した場合でも、実際に課税されたとみなして外国税額控除を認める租税条約上の特別規定です。

なぜ必要か

途上国が外資誘致のため法人税を免除した場合、通常は次のような問題が生じます。

  • 外国税がゼロ → 外国税額控除もゼロ → 日本で満額課税
  • 結果として、途上国が与えた優遇措置の恩恵がすべて日本政府の税収に吸収されてしまう

タックス・スペアリング条項があれば、外国が本来課していたはずの税額を「課税されたとみなし」日本での外国税額控除に算入できるため、途上国の優遇措置の効果が実際に反映されます。

計算例(中国からのロイヤリティ)

中国の関連会社から使用料(ロイヤリティ)100万円を受け取る場合を例に取ります。

項目金額
受取ロイヤリティ100万円
日中租税条約の限度税率(使用料)10%
実際に課される源泉税(条約税率適用後)10万円
タックス・スペアリング適用上のみなし税額20万円(税率20%で納付したとみなす)
外国税額控除の対象となる税額20万円

条約税率の適用により実際の納税額は10万円にとどまりますが、日中租税条約のタックス・スペアリング規定によりさらに10万円分(実際には納付していない税額)を上乗せして控除できます。

適用国

現在タックス・スペアリング規定を設けている日本の租税条約の相手国は、タイ、ブラジル、スリランカ、ザンビア、中国、バングラデシュの6ヵ国にとどまり、縮小傾向にあります。

実務上の注意点

  • スペアリングが認められる所得の種類・期間・条件は条約ごとに異なる
  • 租税条約の改正等により優遇措置が廃止された場合、スペアリング規定が機能しなくなるケースがある
  • 「みなし税額」の証明書類(現地税務当局の証明等)が必要となる

外国税額の証明書類

外国税額控除を適用する場合、法人税申告書に別表六(二)(外国税額控除に関する明細書)等を添付したうえで、外国法人税の額を課されたことを証する書類(タックス・レシート等)を保存しなければなりません。

具体的な証明書類としては、現地での申告による法人税については申告書の写し又は現地の税務官署が発行する納税証明書等が該当します。源泉徴収による外国法人税については、源泉徴収票等が証明書類となります。

タックス・スペアリング(みなし外国税額)の適用を受ける場合は、みなし外国税額を証明する書類の申告書への添付が必要となります(保存ではなく添付が求められる点に注意が必要です)。

実務上の留意点

  • 送金明細・Payment Adviceだけでは証明書類として不十分な場合がある
  • グループ会社に証明書の発行・送付を依頼する場合、タイムラインを事前に共有しておくことが重要

実務上の注意点

① 方式の選択は毎事業年度ごと

損金算入方式・外国税額控除方式の選択は事業年度ごとに行います。繰越管理と連動するため、複数年度の予測を立てて判断する必要があります。

② 税務調査で問われやすい論点

  • 外国税が「法人税に相当する税」かどうかの判定(間接税・罰則的課税との区別)
  • 租税条約の限度税率を超える課税がされている場合に、限度税率を超える部分を控除対象の外国法人税から除外しているか
  • 共通経費の計算を含む、国外所得金額の計算方法

まとめ

  • 外国税額控除は、外国で課された税額を日本の法人税から直接差し引く制度(法人税法69条)。課税所得が黒字であれば損金算入方式より有利になることが多い。
  • 控除できる上限は控除限度額(法人税額 × 調整国外所得金額 ÷ 全世界所得金額)で制限される。調整国外所得金額は共通経費・共通利子の配賦後の金額であり、控除限度額は国外所得の按分より小さくなることが多い。超過額・余裕額はそれぞれ3年間の繰越が可能だが、損金算入方式を選択した年度以前の繰越残高は消滅する。
  • 外国子会社配当(持株25%以上)については配当益金不算入と外国税の損金不算入・控除不可がセットの関係にある。タックス・スペアリングは現在6ヵ国との条約に規定される特別規定で、みなし外国税額の証明書類の添付が必要。

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